大和し思はゆ

葦辺行く 鴨の羽がひに 霜降りて 寒き夕へは 大和し思ほゆ

                          万葉集巻一 六四
                          志貴皇子

風香意訳:
葦べを泳いでいく鴨の羽がひに、凍てつくような霜が降りている。こんな寒さが身に沁み入る夕暮れには大和が思われてならない。


今朝外に出てみると、いつも以上に西の空が明るかった。
隣家の屋根に隠れたその正体をみると、月明かりの明るさ。
そういえば、今朝ニュースで今宵が満月だといっていた。

身に沁みる寒さの中でみる月をみながらまず頭をよぎったのは吉隠で眠る但馬皇女。

「人言(ひとごと)を繁み言痛み(こちたみ)己が世(おのがよ)に いまだ渡らぬ朝川渡る」

月明かりの下、突き刺さるような水の冷たさを感じながら朝川を渡ったであろう但馬を思っていたら、どうしても目の前の月明かりを写真に収めたくなった。

近くの池の水面にはどう映っているんだろう。

東の空はすでにうっすら明るい。

こんな時期に柿本人麻呂さんはきっと

「東の野にかぎろひの立つ見えて かえり見すれば 月かたぶきぬ」

こう詠んだんだろうなと思いながらここがかぎろひの出る阿騎野(奈良県)でなく愛知であることを悔やみながらも、デジカメの準備。
近くの池まで普段なら歩いていくのだが、ここ2~3日持病の腰痛が悪化。
痛みがかなりあるので、車を走らせること2分。

そこには、月明かりが繰りなす素晴らしい景色が広がっていた。

暗黒の空には、鴨が群れをなして飛んでいる。
羽ばたきの音がかすかに聞こえて。

「羽がひ」という表現が好きです。
手が使える訳じゃない鴨が、左右の羽を広げてすっぽりと柔らかく自らの身体を包み込んでいるような美しい表現。
万葉集にはこうした美しい言葉が多く残っています。

まだまだ知らない世界が、たくさんあります。

                   2011年1月20日 wrote

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